エントリーのタイミング

2019-06-16

いつエントリーすればいいのか? これはビギナーのみならずトレーダーであれば誰しもがどこかでぶつかり、試行錯誤するテーマだと思います。

今までのエントリー方法を振り返る

まず、いつエントリーすればいいのか?を考える前に、今までの自分のエントリーを振り返ることが大事です。

エントリーのルールがないトレーダーは、「チャートを見て雰囲気でエントリーする」が多数派になるのではないでしょうか。もちろん、雰囲気エントリーで稼いでいる人もいます。それはチャートの動きをよく理解しているケースであり、稀な才能を持っているか、過去にさんざんチャートの値動きを追い続け、知らない間に勉強を重ねてチャートパターンが頭に入ってしまっている、というケースだと思います。

他に考えられそうなのはファンダメンタル判断によるエントリーです。ファンダメンタルとは、取引銘柄の財務状況、市場環境、将来性、金利・配当状況など、特定銘柄を取り巻く環境、と思ってもらえればいいです(かなり簡単に言ってますが)。株で例えると「将来この会社はAI開発で成長する」と見込んで買ったり、ドル円だと「アメリカの金利は今後どんどん上がるのでドル円は買われるだろう」と思って買うみたいな、今の値動きに関係なくエントリーする方法です。

ただしこの場合は長期保有が前提になると思いますので、このブログで紹介するデイトレードとは手法が異なりますので触れないことにします。また長期保有は時間を失うというリスクもはらみます。一日で出した損失は数日で取り返せるかもしれませんが、数年かけて出した損失は、取り返す期間も失っている、ということになります。 ※詳しくは過去記事「取引時間もリスクです」をご覧ください。

エントリーのルールを作る

ここではエントリーのルールを作ることをお勧めします。ルールに従ってエントリーすれば無駄なエントリーを減らせるからです。トレードで生き残るためには勝つ努力の前に「資金を減らさない努力」をすることが必要です。資金を減らさないためには資金管理のルール化、ロスカットのルール化などいろいろあるのですが、エントリーのルール化もその一つです。

どんなルールが最適なのか?

最適なルールは個人によって異なりますので正解はないのです。またエントリーのルールは複数の条件に合致するとき、としているトレーダーも多く、私もその一人です。そうなると100人のトレーダーがいれば100パターンのルールがある、といっても過言ではありません。

インジケーターは必要か?

ルール作りをする時、インジケーターを使用すると効果的な場合があります。それは数値や形という客観的な判断ができるようになるからです。一方デメリットもあります。例えば相場環境の変化によって、それまで機能していたインジケーターが機能しない場合があるという点です。そのためエントリールールにインジケーターを導入する場合は複数のインジケーターを用いることが主流になっています。

よく使われるインジケーターは?

インジケーターにはいくつかのカテゴリがありますが、主なカテゴリはトレンド系とオシレーター系に分けられます。

トレンド系: 移動平均、ボリンジャーバンド、一目均衡表など。主に順張りに適しています。相場の環境認識には欠かせないものです。特に移動平均線はほぼ全てのトレーダーが使っているのではないかというくらいメジャーなものです。私は8本の移動平均線を表示させていることが多いです。

オシレーター系: MACD、RSI、Stochasticなどがメジャーです。振り子のように一定の幅を振幅するもので、逆張りに向いています。トレンド系が環境認識に向いていることに対して、こちらはトレンド転換の認識に使われます。私は主に4時間足のMACDを使っています。

正直この2つのカテゴリの中のいくつかを使いこなせば事足ると思います。あまり多くのインジケーターを導入するとIn/Outのタイミングに迷ってしまうからです。

また、トレンド系とオシレーター系を組み合わせてルール作りをすることをお勧めします。トレンド系だけの使用だとエントリーもクローズもタイミングが遅くなる可能性があり、オシレーター系だけの使用だと「木を見て森を見ず」になるおそれがあるからです。

エントリー・クローズの実例

 

上の画像は日経平均の4時間足チャートです。ローソク足のチャートにある様々な線が移動平均線、チャートの下にあるのがオシレーターのMACDです。ここで設定している移動平均線は単純移動平均(SMA)で、期間の設定は以下の通りです。

  • 赤・短期線:20期間=20x4時間=過去80時間における各ローソク足の終値を平均したものをつないだ線
  • 黄・中期線:50期間=50x4時間=過去200時間(以下同上)
  • 青・長期線:100期間=100x4時間=過去400時間(以下同上)
  • 紫・長期線2:200期間=200x4時間=過去800時間(以下同上)

短期線(赤)が中期線(黄)を下から上に抜けるとき、またはその逆がトレンド転換とみなされます。ここではA、B、Cがそれにあたります。しかし私がこの相場で実際に取引に利用したのはBのみで、A、Cで取引はしておりません。そのロジックを解説します。

A: 買いシグナルのはずですが買いません。なぜなら日足・週足で見ると大きなトレンドは下落方向。必ず上位の足のトレンドに従ったポジションを持つようにしているので、ここでとる行動は「売りポジションの一部利益確定」です。※実際はさらなる下落を待っていたので利益確定はしませんでしたが。

B: 数本足手前で大きな乖離が発生しています。つまり赤い短期線と実際のレートが乖離している状態のことです。ですのでBの数本足手前のところで一部を利益確定しました。そしてBで再び新規売りを行いました。Bを経過してさらに値が上がったのでさらに追加で売りました。

C: すでに上昇トレンドになっているところでのサインですので強気で買ってもいい場面かもでしたが、Cの手前のMACDの買いサインYの手前で売りポジションを全部利益確定していたこと、そのあとYで新規買いを起こしていたこと、また大きなトレンドはまだ下落方向であると判断したため、無理をせず追加買いは見送りました。結果としては追加買いが正解だったのですが、いずれ下落方向に戻ってくると思っていましたので無理はしないという判断です。

MACDの使い方

次にMACDを使ってのエントリーの解説です。すでにYのポイントでの取引を前述してしまいましたがMACDのシグナルについて簡単に記述します。

MACDのシグナルは大きく分けて2種類。

  1. 高い山から、もしくは深い谷からの売買転換サイン
  2. 山から谷に、もしくは谷から山に移行する際のゼロポイントでの売買サイン

実際に以下の図で、どこが売買サインなのか見ていきます。

 

まず、赤い線はシグナル、それぞれの白い棒がMACDと呼ばれます。0ポイントはちょうど中間あたりにある平行線です。0.0という数字が右端に小さく見えていると思います。

■山と谷からの売買サイン

W:MACDがシグナルを下回った=売りサイン
X:MACDがシグナルを上回った=買いサイン
Y:MACDがシグナルを上回った=買いサイン
Z:MACDがシグナルを下回った=売りサイン

しかし実際にエントリーとクローズに使ったサインはYとZのみです。これはMACDの山の高さ、谷の深さが高ければ高いほど、深ければ深いほど、その後の値動きが期待通りになることが多いからです。

上記の例ではW、Xでエントリーしても利益を上げられるタイミングはありました。しかしそれは結果論です。インジケーターをそのまま信用するのは危険です。できるだけ勝つ確率の高いところでエントリー・クローズするためにインジケーターを使う方がより効果的になります。これも一つのエントリールールの一つとして使えると思います。

■ゼロラインを利用したエントリー

ゼロラインはMACDもしくはシグナルがプラスからマイナス圏に、またはマイナスからプラス圏に反転するサインです。MACDとシグナルの両方が反転した時に信用度が増す、と言われていますが、エントリーのシグナルとしてはお勧めできません。実際にここではMACDとシグナルがともにゼロラインを超えた状態でエントリーとクローズをした場合でシミュレーションします。エントリー、クローズとも、そのローソク足の終値を利用します。

  • 1で買って2で決済:21336→20856 損失 -480
  • 2で売って3で決済:20856→21176 損失 -320
  • 3で買って4で決済:21176→20894 損失 -282
  • 4で売って5で決済:20894→20472 利益 +422

この相場の例では全く機能しておりません。もちろん機能する相場環境もあると思いますが、MACDのゼロラインは、「まだまだいけそうだ、もうそろそろだ」的な相場環境の認識として利用するのがよいと思っています。

ちなみに私はゼロラインによる売買サインは「高い山から、もしくは深い谷から」のシグナル以外はエントリーのシグナルとしては使用しません。上の図では使用したのは5番のみです。そして利用するときは最初のエントリーではなく、大体が追加ポジションを建てるかどうかで利用しています。

取引ルールは複数持つ方がよい

一つの取引ルールではトータルでプラスにするのは難しいと思います。私はMACDを使ってエントリーすることもありますが、他にはブレイクアウト戦略、ショートストップ戦略、3波動、フィボナッチを使った取引ルールも持っています。

相場環境によっては今まで機能していたルールが機能しなくなることもあります。またそのルールが出現するまでの待ち時間がやたら長くなる時もあります。これは機会損失にもつながります。常にポジションを持つことはしませんが、一つのルールの出現を待ち続けて1年間取引できなかった、などというのも本末転倒です。

一つのルールにも複数の条件がある

複数のルールを持つ方が有利に戦えますが、そのルールの検証をする時間もかかります。焦らずにまずは一つのルール、一つの条件を作り、それを過去のチャートと照らし合わせて機能するかどうかを検証し(上記でやったような方法のように)、それをより精度の高いものにするために、1つのルールの中に2つ目、3つ目の条件を加えていく、という手法がまずはよいのではないかと思います。

これはかなり地道な作業になりますが、チャートや相場への理解も深まること間違いなしです。

そして最後は直感と勇気です

ここまできて「最後は直感と勇気」とか、なんだか体育会系な話になりますが(笑)、経験を積んでくるとチャートをぱっと見ただけで「危険」とか「いける」って思うことが出てきます。そしてそれは意外と当たります(笑)。それは人間が本能で持っている機器察知能力からくるものだと思います。

しかし何が危ないのか?ってことを経験、理解していないことにはこの直感は働かないと思います。

取引ルールを持たずに成功しているトレーダーは、成功するまでに相当な時間相場に向き合ってきたのだろうとと思います。そしていつの間にか体得した見えないルールがあってそれに従って取引しているから稼ぐことができているのだと思います。

ビギナーやなかなか利益を上げられないトレーダーさんは、まずはルールを作り、経験を増やす、ということをお勧めします。経験が一番の先生になると思います。